それいけ!食農探検隊
きついにおいのものは美味しい?
きついにおいのものは美味しい?
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これより、食農探検隊会議を開催する。今回の議題は?
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今回の議題は「発酵食品の中にはきついにおいがするものがありますが、なぜ、好んで食べる人がいるのですか」です。基礎情報として、発酵の仕組みについていっとくんからの報告です。
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報告します。発酵には「酸素が無い状態で、糖などを分解してエネルギーを得ること」と「微生物の作用によって有機物が分解され、別の物質に変化すること」の2つの意味があります。食に関しては後者の意味が大きくなります。微生物にしてみればやっていることは腐敗と同じですが。
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そういえばどちらも食べ物が変化することよね。発酵と腐敗の違いは何なの?
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作り出されるものが人間にとって有益であれば発酵です。ただし、これは食文化が大きく影響します。「納豆」を例にすると、朝食には欠かせないという日本人には納豆菌の働きは大手柄となりますが、納豆を食べる習慣のない国の方たちにとっては豆を腐らせただけの評価になります。
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それにしても、においはどうにかならないのかな?
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有益のものを作る発酵であっても、糖を分解すればエタノールや乳酸、酢酸などが、タンパク質を分解すればアンモニアや硫化水素などができることを止められません。これらはすべてきついにおいがします。発酵食品とはにおいの向こうにある美味しさや栄養を見つけ出し、伝えてきた食文化の伝統なのではないでしょうか。以上です。
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確かに、発酵食品を食べて美味しさに気づくと、においがあっても食べたくなるんだから不思議だよね。次の報告は?
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続いて、どんな発酵食品があるかについてあぐりちゃんからの報告です。
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報告します。食品の扱い方には「そのまま食べる」「火を通す」「発酵させる」の大きく3つに分かれるとされています。3つ目の発酵食品では、発酵する微生物も発酵される食材も世界各地で様々な組み合わせがあります。ですから、においの強弱も様々あります。
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では、どんな組み合わせがあるのかな?
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日本だけでも例を挙げますと、ニゴロブナに乳酸菌の「鮒ずし」、ダイズに納豆菌の「納豆」、お酒類に酢酸菌の各種の「酢」、「日本酒」はお米を麹菌と酵母菌の2段階で発酵して作るなどあります。
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においの強弱も様々あると報告してくれたわね。最もきついにおいとなると…。やっぱり、あの缶詰? でも、どうして、缶詰なのに発酵しているのかしら?日本の缶詰はそんなことがないのに?
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スウェーデンの「シュールストレミング」ですね。魚のニシンが原料で薄い塩水につけて缶に詰めるだけですから、中で発酵が進んでしまいます。日本では缶に詰めて空気を抜いてから熱を加える作業をします。「食品衛生法」によって原料から作り方まで厳しく定められています。ただし、日本の缶詰でも古くなって膨らんでいる場合は要注意です。食材が傷んでいることが多いし、開けようとすると破裂することもありますから。以上です。
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「とても耐えられないにおいなのになぜ食べるのか?」とは発酵食品についてまわる疑問だね。でも、そこには命をつないできたそれぞれの地域の食文化があるのだから尊重しなくてはいけないね。
補足
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日本での代表的な発酵食品である「納豆」は機械化が進み、蒸したダイズをパック容器に入れ、別に培養した納豆菌をつけて発酵させています。伝統的な作り方は、わらを熱湯で消毒して束にしたものに、蒸したダイズを入れて、わらについている納豆菌に発酵させます。自分で作ることもできますが、まず、汚れていないわらを探すことから始めないといけませんね。