それいけ!食農探検隊
手間暇かかる美味しさ
手間暇かかる美味しさ
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これより、食農探検隊会議を開催する。今回の議題は?
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今回の議題は「茶わん蒸しに入れることがある、ゆり根はきれいな花のユリと同じ植物ですか」です。基礎情報として、ゆり根の栄養、効能についてあぐりちゃんからの報告です。
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報告します。ゆり根はユリの根元の土の中にできる葉が変形した鱗茎です。鱗茎を食用とする野菜は他にはタマネギなどがあります。含まれている栄養は炭水化物が多いですが、高血圧予防になるカリウムや発育を助ける葉酸などがあります。
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では、きれいな花を咲かせているユリの根元を掘り起こすと美味しいゆり根がある、ということかな?
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現在、食用とされているのはコオニユリ、オニユリ、ヤマユリ、カノコユリの4種です。その他のユリは食べないほうが無難です。アクが多くて苦いから食べられないならまだしも、毒を含んでいる場合もありますから。食用のユリでも観賞用として販売されている場合は、病気の予防のため薬に浸していることが多いので食べてはいけません。
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ゆり根を食べているのはどこの国の方たちかしら?
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日本でも15種が自然に生えているユリは、北半球に広く分布していて自然のままの原種も100種くらいあります。ただし、鱗茎が食用に適しているユリは東アジアに限られていて、食べているのは日本と中国くらいだとされています。両国とも古くから薬用にもされてきました。以上です。
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ゆり根の素揚げはホクホク感が口の中に広がって美味しいね。次の報告は?
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続いて、ゆり根の栽培についていっとくんからの報告です。
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報告します。あぐりちゃんの報告にもあったとおり、日本でも15種のユリが自然に生えています。奈良時代の古事記や万葉集には花を愛でていたことは書かれていますが、ゆり根を食用にしていた確実な記録は江戸時代までありません。この記録には栽培方法や食べ方が書かれています。
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始まりははっきりしないが、遅くても江戸時代にはゆり根の栽培や食用が一般的になっていたんだね。では、現在ではどこで栽培されているのかな?
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ユリは基本的に高温・多湿を嫌います。かつてゆり根は、日本全国で栽培されていましたが、現在では北海道がそのほとんどを生産しています。ユリは種や球根以外にも、わき芽が大きくなった零余子、地下茎が大きくなった木子で増やすことができます。ただし、小さな種、零余子、木子から食べられる大きさのゆり根を作ろうとすると5年はかかります。
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なぜ、ゆり根の栽培はそんなに時間がかかるの?
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まず、春に植えて秋に掘り出すことを4年行って球根を大きくします。花が咲いては大きくならないので、つぼみが付いたらすぐに摘み取ります。冬の間もおがくずで保護して保管します。4年かけて大きくした球根を植えてやっと、球根の回りに食用とできる鱗茎が付きます。しかも、同じ畑に植えると病気になりやすい作物なので、毎年畑を代えて植え替える必要があります。以上です。
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畑まで代えてやる必要があるのか。5年の年月と合わせて考えると、ゆり根は小さくても、手間も暇もかかる、ぜいたくな食べ物なんだね。
補足
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ユリは、食用ともされている4種も含めて、美しい花を咲かせます。世界的に見ても古くから美しさの象徴とされています。より美しいものを求めて、世の東西を問わず、ユリの品種改良が行われてきました。日本を含む東アジアが原産のヤマユリ、カノコユリ、テッポウユリなどは、その美しさと香しさでヨーロッパの方たちも魅了し、現在の花屋を飾る多くのユリの原種となっています。