それいけ!食農探検隊
神様のお告げから?
神様のお告げから?
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ニュースでやっていたんだけれど、そうめんの値段は占いで決まるんだってね。
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占いで?本当なの?
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本当のことだよ。日本のそうめんの発祥とも言われる奈良県の三輪そうめんの卸値は、桜井市三輪地区にある大神神社で2月に行われる卜定祭で、「高値」「中値」「安値」の中からご神託によって決められているんだ。
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なぜ、大神神社で占っているんですか?
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大神神社は日本最古とも言われる神社で、奈良時代に神主の息子さんが飢饉や疫病で苦しむ人々を救うことを祈願したところ、「三輪の地は小麦を育てるのに適した場所である」というお告げを得た。そこで小麦を育てて、そうめん作りを始めたという伝承があるんだ。このことからそうめん作りに携わる人々から崇められているんだよ。
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それでは、そうめん作りは奈良時代から始まったんですね。
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実は最新の研究では、奈良時代に中国から伝わった米と小麦の粉を混ぜて練った「索餅」というお菓子が原形らしい。太さは縄くらいで日本語では「麦縄」とも呼ばれていた。平安時代には「7月7日に食べると1年間無病息災で過ごせる」と言われて宮中で食べていたようだ。
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そんなに太いものがどうして細長くなったんですか?
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細長くしていく手延べの方法は鎌倉時代に伝わったらしい。室町時代には文献に「素麺」と記録されるようになり、江戸時代には各地に名産品ができた。現在では機械で作る例も多いが、昔ながらの手延べにこだわる産地も西日本には多い。むしろ、西日本ではそうめんとは手延べであると認識している方がほとんどじゃないかな。
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そうめんは食欲が出ない夏の暑い時期しか食べないよね。だから、余ってしまうよ…。
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寒い時期でも熱々のお出汁に入れるにゅうめんもあるし、お味噌汁の具にしても美味しいわよ。そうめんサラダにすることもできるわ。そもそも、乾麺にしたそうめんは保存食なのよ。
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どれくらい保存できるんですか?
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美味しく食べられる目安の賞味期限は、機械で作った場合は2年、有名どころの手延べそうめんなら3年6カ月としていることが多いわね。
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なぜ、手延べでは賞味期限が長くなるんですか?
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手延べの作業を簡単に言うと、小麦粉と食塩水をこね合わせて作ったひも状の生地を「よりをかけながら延ばす」→「食用油を塗る」→「寝かせる」→「よりをかけながら延ばす」…の繰り返しなのよ。この油を塗ることで保存するときに問題となる湿気からそうめんを守っているのね。
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そうめんがどれだけ保存できても、できたてを食べるほうが美味しいですよね?
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それがね。手延べそうめんではできたての「新物」より、2回梅雨を越した「古物」に、さらに1回、計3回梅雨を越した「大古物」になるほど美味しいとされているのよ。時間がたつほどこしが強くなるからだって。適切に保存を続けていれば賞味期限ギリギリが最も美味しいことになるのかな。
補足
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そうめんの生地は「小麦粉と食塩水をこね合わせて作った」ものですから、うどんやひやむぎと同じです。違いは太さにあってJAS規格では直径が1.3mm未満がそうめん、1.7mm未満がひやむぎ、それ以上がうどんとされています。乾麺にしたときの賞味期限は細いほど長くて、うどんは1年、ひやむぎは2年、そうめんは手延べなら本編にもあるように3年6カ月が多いです。災害に備える保存食には味が固定しているカップめんよりも、好みの味付けができるそうめんが優れていると言えるでしょう。