特集 人と地球の明るい未来のために
他人事では済まされない食品ロス問題
コロナ禍で一時、マスクの買い占めが起こりました。誰かが過剰に買いだめすれば、本当にマスクが必要な人が困ってしまいます。
同時に食料品の買い占めも問題になりました。野菜など生鮮食品を宅配する会社には注文が殺到し、注文できない人も出てしまいました。高齢や障害などで近所の店まで買い物に行けない人にとって、宅配は食材を確保する頼みの綱です。直接店まで買いに行ける人までが一気に注文すれば、宅配でしか買えない人の機会を奪うことになってしまいます。
飲食店で食べ切れないほど料理を注文して食べ残し「お金を払っているんだから食べようが残そうが自分の勝手」と言う人もいます。飲食店で食べ残せば、生産者やお店の人が苦労して作った食材や料理、かけた時間、お金など、全てが無駄になります。残された料理は家畜の餌や肥料にリサイクルすることもできますが、外食産業のリサイクル率は決して高くなく、ほとんどが「事業系一般廃棄物」として、家庭ごみと一緒に焼却処分されます。廃棄コストはお店が払うだけでなく、私たち市民が市区町村に納めた税金でも賄われるのです。東京都世田谷区の場合、事業系一般廃棄物の処理コストは1㎏当たり 59円 (2021年4月発表)。焼却すれば二酸化炭素が排出されて気候に悪影響を与え、自然災害が起こりやすくなり、農作物もできにくくなります。
エシカルとは人や社会、環境を思いやること
「エシカル消費」という言葉は中学校で習います。家庭科の教科書には「個人の満足だけでなく、人、社会、環境、地域などの側面にも配慮した倫理的な消費」とあります。自分のことだけでなく、他の人や環境にも配慮することが大切だということです。
食品ロスを減らすため私たちができること
それでは、エシカル消費で食品ロスを減らすことはできるのでしょうか。
- 家にある食材を確認しリストを作って買い物をし、無駄買いを防ぐ。
- 一人暮らしでキャベツを丸ごと使い切れないなら2分の1個、4分の1個を買う。
- 野菜は市販の野菜保存袋に入れて品質を保ち、日持ちを良くする。
- 冷蔵庫に入れる食品は容量の約70%に収め、管理しやすくする。
- 余った野菜はカレーやスムージーに入れたりして使い切る。
- 家庭用生ごみ処理機にかけたり、コンポストに入れたりして生ごみを減らす。
「エシカル」といわれると難しく感じますが、他の人や社会、環境を思いやるということではないでしょうか。
自分の消費行動は、”他の人や社会、環境に大きな影響を与える”ということなのです。
農業の視点から食品ロス削減を考えましょう!
規格外不ぞろいでもおいしい野菜たち
決められた大きさや形から外れた野菜は「規格外」と呼ばれ、流通させることができません。でも形も大きさもバラバラなのが自然の姿。例えば、野菜宅配の「大地を守る会」では「もったいナイシリーズ」として規格外の農産物が販売され、野菜販売サイトの「みためとあじはちがう店」では、規格外青果物を箱詰めして大田市場から直送しています。コロナ禍で「ポケットマルシェ」や「食べチョク」など、規格外を含めて生産者から直接購入できるサイトが大人気になりました。
労働生産性捨てる作業は無駄な作業
日本最古のリンゴ園、青森県弘前市のもりやま園では、全労働時間を計測した結果、主に3つの「捨てる作業」に全労働時間の75%を費やしていることが判明しました。摘果、枝の剪定、葉取りです。海外では葉取りをしていません。葉を取らない方が味が良い場合もあります。そこで葉取りをやめました。摘果したリンゴは世界初の摘果果によるお酒「テキカカシードル」として商品化しました。代表の森山聡彦(としひこ)さんは農家の労働生産性を上げるために尽力しています。
鮮度ニーズが違えば値段も変わる
「鮮度が落ちたら値引きする」のが一般的だと思います。2021年2月、経済産業省と複数企業は、鮮度が高いほど標準価格よりも値段を上げ、徐々に値段を下げる実験をネットスーパーで行いました。すると、値段が高くても、毎回鮮度が高い物を選ぶ消費者がいたのです。
生産者にとっては利幅が増え、電子タグでどこの地域で買われたのかも追跡できて、興味深い結果となりました。